オリジナルサスペンス

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第9話













「きゃあああ!!」




病院のある場所で看護婦が叫んだ。


「だ、誰かっ!誰かあっ!!」


病院が一気に慌ただしくなった。





「ん?」


賢人も病院の騒がしさに気づき、陽奈の体から離れた。


「ん・・・賢人?」


賢人はベットからおり、床に落ちていたシャツを拾った。


「何か、病院が騒がしい……」


「え?」


陽奈はベッドから起き上がり、ボタンが外されたブラウスを押さえ、暗闇の中にいる賢人を見た。


「外がヤケに明るく見える…」


賢人はブラインドの隙間から外を見た。ちょうど下に病院入り口辺りが見え、赤いランプがいくつも点滅している。


「パトカー?…まさかっ!!」


賢人は何か嫌な予感がして、予備の白衣を近くにあるロッカーから取り出し、部屋を飛び出していった。


陽奈は賢人の表情から何かを感じ取った。


そして急いで乱れた服を直し、賢人の後を追っていった。








その頃マンションでソファに座りボーっとしていた由理。




カシャーン!




いきなりベッドの方から何か金属音が聞こえた。


振り返ってみると、サイドボードに置いてあった指輪が落ちている。


真からもらったあのダイヤのリング。


ボードの真ん中に置かれていたはずなのに……。


ふと何かが頭をよぎった。


「……真?」


気がつくと由理は病院に向かって走っていた。


手にはリングを握って……。






「そんな…。」


賢人はそれ以上声が出なかった。


陽奈は息を切らしながら賢人の隣へ来た。そして顔を上げた。


「!!!」


目の前にはガラスが飛び散り、ベッド周りの機械は全て破壊されて煙を出し、ピーっと高音が鳴り響いている。


そしてベッドの上に寝ていた真は包帯が剥ぎ取られ、所々から血が出血し、見るも無残な姿になっていた。


「いやああああっ!」


ドサッ 


「陽奈?おいっ!陽奈っ!!」


陽奈はショックでその場に倒れてしまった。


賢人は急いで抱え上げた。


「なぜ…こんなことに……。真……。」


そう言い残し、その場を後にした。


そして……その場にあの日斗警部がいたことに賢人は気づかなかった。


「まさか…あの花本ルリコがやったのか……?年齢不詳のあの女が……!?」


警部は現場を見るなりそう、つぶやいた。






「な…名古くん!!」


ちょうど陽奈をベッドに寝かし、急いで現場に戻ろうと病院の玄関の前を歩いていた賢人を誰かが呼び止めた。


「…由理さん!?」


賢人は驚いた。走ってこられるほど由理は体力がなかったはずなのに…。


それになぜ…ここへ…?


「はぁはぁ…名古くん、ま、真は?」


由理はかなり苦しかった。息がつまりそうになるのを必死にこらえている。


賢人はフラつく由理を心配になり支えようとした。


「都さん、大丈夫?」


パシッ


賢人がさしのばした手を、由理は振り払った。


「…真と比べたら私はなんてことない……」


「由理さん…」


「ねぇ…真は…真はどうしてるんですか?」


「……」


賢人は少し言葉に迷って黙った。


呼吸を整えながら由理は賢人の様子を伺っていたが、


「…!?ううっ!!」


由理は胸を押さえ、そのまま倒れてしまった。


「…由理さん?由理さん!」


周りは騒然となった。賢人は急いで由理の脈をとる。


「脈が不定期…呼吸困難…だ。そこの看護婦さん!急いで担架を!!」


賢人はすぐ担架に由理をのせ、病室へ運んだ。


そして由理に精神安定剤と、点滴をうった。


次第に由理の脈は安定し、落ち着いてきていた。


「ほんとに無茶をする人だな……」


賢人はそう言いながら、由理の毛布をそっとかけなおそうとした。


そのとき、由理の手から何か光るものが見えた。


賢人はそっと由理の手からそれを取り出した。


「……ダイヤのリング…か……。」


賢人はじっとリングを見つめていたが、そのまま白衣のポケットにしまった。


そして由理の頭をそっと優しく撫でた。


「…賢人?」


その行動を陽奈が見ていた。


陽奈は意識が戻るとすぐさま、賢人を探しに病院内を歩いていた。


しかし、そこで由理が倒れたことを知りここへ来たのだ。 


陽奈は病室に入らず、そのまま玄関へ向かった。


「どうして?賢人は……由理のこと……?」


どこか愛しそうに由理の髪をなでる賢人はまるで別人のようだった。


自分を抱きしめてくれたさっきの感じとはまた違う何かを感じる…。


陽奈は病院を出て、いつの間にか警察署に向っていた。





to be continude...