オリジナルサスペンス
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第6話
病院から家に戻り、カギを開け中に入った。
「?」
玄関を入ると黒っぽい大きな点がついていた。
昨日、陽奈と家を出るときは何もなかったのに…?
由理は薄暗い玄関の明かりをつけた。
「何っ!?」
明かりをつけた瞬間、由理はそんな声をあげた。その黒っぽい点は明かりによって赤く見える。
「血・・・」
そしてその血はキッチンまで続いているようだ。
由理は震える足に勇気を奮い立たせ、一歩一歩キッチンへ向けて動かしていった。
だんだん血の量が多くなってきている?ところどころ飛び散ったように細かい血痕も見られる。
恐怖とその先に待つものに胸が押しつぶされそうになる。必死で胸を押さえ、キッチンへ入った。
「!!」
由理は目を大きく見開き息を呑んだ。
キッチンは大量の血液が・・・ペンキをぶちまけたような真っ赤な床になっている。
「な・・に?コレ・・・・・・・」
そしてキッチン下の棚から赤いどろどろした液体が垂れてきていることに気づいた。
由理は恐る恐るしゃがんで棚に近づき、取っ手をつかみ思い切り開けた。
「きゃああああああっ!!!」
中で包丁が真っ赤な血を流していた。いつも由理が使う包丁である。
真に買ってもらったお気に入りだった。その包丁が大量の血で染まっている…。
そしてだんだんと由理の体も赤く染まっていった。
包丁から流れ出る血は止まらない。
由理はしばらく放心状態だった。震いが止まらず、全く動けない。声も出ない。
ただ手が赤くなっていくのを見るだけ・・・
バンっ!
いきなりドアの開く音がした。
「都さん?都さん!!」
由理の目の前に賢人が…
由理の肩を揺さぶり懸命に由理の名を呼ぶ。
由理はしばらく放心状態だが、ふと我に返り目の前で必死に名を呼ぶ賢人に気づいた。
「な・・・ごくん?」
「都さん・・・これは?」
血だらけの由理に驚く賢人。だが由理は次第に顔を歪め、瞳から大量の涙をこぼした。
「帰ってきたら・・・こんな状態に・・・」
賢人はうなずきながらそっと由理の頭をなでた。由理は目を閉じると深呼吸をした。
「もう、大丈夫だよ。都さん」
賢人が来てくれたことで、由理はほっとしたのかふっと意識が途切れ、そのまま賢人にもたれるように倒れた。
「都さん?都さん?……ふぅ、気を失ったのか。」
賢人はゆっくり由理を抱え上げ、ベッドへと運んだ。
そして、由理の顔を見た。精神的な疲れと、涙のあとが残る由理の顔。
「あなたの美しい顔が…可哀想だ…。」
賢人はゆっくりと由理に近づき、そっと唇にキスをした。
「俺があなたを守れたら……。」
そのまま、賢人は眠っている由理を見ていた。
「ん……?」
由理はゆっくりと目を覚ました。ベッドの上で寝ている自分に驚き、勢いよく起き上がった。
「由理?気がついたの?」
ベッドの横で陽奈が心配そうに声をかけた。
「はぁ…あ、陽奈…仕事は?」
「ん?終わったから様子を見に来たの。そしたら玄関開いてたからびっくりしてさぁ、でも何もなかったみたいでよかった。由理はぐっすり寝ていたし。」
陽奈は賢人には会わなかったようである。…でも何もなかった?
由理は慌ててキッチンへ向かった。
「ちょっ、ちょっと由理?」
陽奈はびっくりして後を追う。
キッチンはいつものようにきれいに片付いていた。包丁もきちんときれいになって入っている。
血の跡はどこにも全くなかった。
「陽奈、名古くんは?」
「え?賢人がどうかした?」
「あ、ううん、なんでもない。なんだか夢でも見ていたのかな?」
「…そう。じゃあ、ここでコンビニ弁当だけど置いとくから食べてね。私はちょっと用事があるから帰るよ。今日もゆっくり寝てね。」
リビングのテーブルにお弁当の袋を置き、陽奈は出て行った。
「陽奈…ありがとう。」
由理は静かにそう言い、玄関で陽奈を見送った。そして、ふと思い出した。
「私は病院で寝ちゃう前に、名古くんと何を話していたの?」
由理はそのままソファに座り考え始めた。
陽奈がマンションから出ると、道にでる植木のあたりに賢人がいるのを発見した。
「あれ?賢人じゃない?どうしたの?」
賢人は陽奈を発見するなり急いで腕をひっぱり近くのレストランへ入った。
「ちょっとぉ?いきなりどうしたの?」
「しっ、なんだか誰かにみられている気がするんだ。あまり大声を出さないで。」
陽奈はびっくりして身をかがめ周りをゆっくりと見渡した。
「え?どうして?何があったの?」
「都さんから聞かなかったか?」
「へ?」
「…いや、なんでもない。都さんどうだった?」
「うん…ぐっすり寝てたけど、時々苦しそうにうなっていたわ。私、どうすることもできないし…それに真くんのことも…。」
「木上さんまで元気をなくしちゃいけないよ。都さんを支えられるのは今は君しかいないんだから。」
賢人の言葉に陽奈は励まされ、落ち込むのをやめた。
「…そうね。早く由理の笑顔が見れるように私もがんばらにゃ!」
「はは、頼もしいね。」
賢人の笑顔にドキッと心臓が大きな音をたてた。陽奈はついうつむいた。
「ん?どうしたの?」
「なんでもない、なんでもないよ。はは…。」
いきなり賢人の表情が変わった。
「……重要な話があるんだ。」
「え?」
賢人は陽奈をつれて病院へ向かった。
to be continude...