オリジナルサスペンス

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第5話













「由…理……」





頭の中に自分の名を呼ぶ声が響く。





そして唇に柔らかい感触・・・・・・





「ん……ま…こと?」




「由理さん?都さんっ、都さん。」


「・・・・・・?」





ガバッ!!





由理は飛び起きた。


「あれ?ここは?」


由理がふと自分のいる場所を確認すると、病院のベットの上であると気づいた。


そして由理は違和感のする唇を押さえ横を見ると、心配そうに由理を見る賢人の姿があった。


「大丈夫ですか?都さん、なんだか話しているうちに寝ちゃったんですよ。すごく疲れていたようなので寝かせておいたんですけど、ずっと起きないから……。」


お昼ごろ来たのに、由理が気づいたときはもう日が暮れそうになっていた。


「きゃあー!ごめんなさい。ああ…。」


由理は急に頭がくらくらして前に倒れそうになった。


「おっと。急に起き上がるから…。」


賢人はそう言って由理の肩を支えた。


そのとき二人の顔が妙に近くなり由理はドキッとした。


「あ、ありがとうございました。ほんとに迷惑かけちゃってすいませんっ。」


由理は急いでベットから立ち上がり、荷物をつかんで立ち去ろうとした。


「都さん。また、何かありましたら俺のとこ来てくださいね。いつもここにいますから。」


賢人の優しい声に心臓の鼓動はさらに速くなり、息が詰まりそうになった。


由理は賢人に向かって一礼すると、ドアを開け出た。


その後一目散に、真のいる集中治療室へ向かった。


「何?…この気持ち。名古くんは真の親友だよ?」

   
由理は自分で自分にそう言い聞かせた。そして真をガラス越しに見た。


ガラスの向こうの集中治療室にはたくさんの機械に囲まれ、たくさんの管でつながれている真がいる。


目を閉じたままの真。


由理はガラスに手を当て、目が覚めてくれることを祈った。


今も真は自分の死と戦っている。


懸命に生きるために…こうして意識がなくとも心臓は動いているんだ。





「それなのに私は……真に何もしてあげられないなんて………。」





由理の目から涙が溢れた。ただ見守ることしかできない自分の無力さを感じるしかなかった。









「…失礼します。」


賢人が部屋で資料を整理しているところへ誰かが入ってきた。


「誰だ!?」


賢人は急いで資料をしまい、ドアの方へ向かった。


賢人の前に現れたのは全身黒装束の人だった。下を向き、黒いフードで顔を確認できない。


ただ、頭にかぶっているフードから、茶色の長い髪が少し出ている。


「私…人を……あの人を……殺しました。…包丁で……あの憎い女の包丁で……フフ……フフフフ…これであの人は永遠に私のもの……。」


女の声か…?


賢人は何かを感じた。


「!!」


黒装束の人はゆっくりと顔をあげ、手に隠し持っていたナイフを取り出し、ニヤリと笑った。


その瞬間―――





ザクッ!バシュッ!!






賢人の白衣が一気に真っ赤に染まった。


黒装束の人が自ら首の動脈を思いきりナイフで刺したのだ。


「ああ…あああ…」


「…ググっ…これはあなたが……望んだこと……だろ…う?…フフ…もうすぐだ……もうすぐ…。」


そういってバッタリと倒れ、絶命した。


ただ首から血が止まらず噴出し、賢人の足元まで流れてきていた。


「………」


賢人はただ動けず、血で真っ赤に染まった黒装束の女を眺めていることしかできなかった。







to be continude...