オリジナルサスペンス

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第3話














眩しい光がカーテンの隙間から注ぎ込む。


由理はその眩しさで目が覚めた。目を軽くこすりながら布団をつかむ。


そして一緒にベッドで寝ている真の方を向いた。





……いない。






トイレにでも行ったのかと思ったが、全く何も音が聞こえない。


由理は起き上がり、もしや夢ではないかと左手を見た。


左の薬指にはしっかりとキラキラと輝くリングがあった。





「あぁ、夢じゃないんだ。」





そう安心し裸のまま部屋をあちこち探したが、真は全くどこにもいなかった。


荷物も靴もない。何も言わずに帰ってしまったのか?


「一緒に私のマンションに来たはずよね…何か急用ができちゃったのかしら?」


そう思いながら服を着て、コーヒーカップを手にキッチンへ向かった。ついでにリビングにあるテレビをつけた。





『ニュースをお伝えします。昨夜未明、東京都○○区にある駿河公園の敷地内にあるベンチで男の人が血を流して倒れているのを、見回りをしていた警察が見つけました。』





その公園は夕べ、由理と真が結婚を誓ったところである。


そんなところで殺人があったなんて…。由理はテレビを見た。





『…え…関野真さん28才、会社員の方で…現在病院に運ばれ治療を受けていますが今のところ意識不明の重体です…』


ガッシャーン!! 





由理の手からカップが落ちた。





ルルルルルル………

   
室内に電話が鳴り響く。だが、由理には何も聞こえない。


「…由理?由理!!いる?由理ぃ!!!」


留守電に切り替わっていた。

   
「今から由理のとこ行くよ!待ってて!!」

   
そしてそんな待つ間も無く、チャイムの音が。

   
「由理?開けて!由理っ私よ!!」

   
「よ…陽奈?」

   
由理は我に返り、必死で玄関に走りドアを開けた。

   
「はぁはぁ…ゆ、由理…。あのね…あの……」

   
陽奈は走ってきたようでかなり息を切らしている。由理は陽奈を見ると玄関に泣き崩れた。

   
「ま…真がぁ……っ!!」

   
「由理っ、今から病院行こう!たまたま真くんの運ばれた病院が賢人の病院なの!賢人から連絡あって、さっ。」

   
陽奈はそう言って、泣いてうずくまる由理を抱えなんとかマンションから連れ出した。








「木上さん、都さん!」





病院に着くと玄関から白衣を着た男が二人のもとへ走ってきた。


「賢人っ!真くんは?」


「とても危険な状態だ。さぁ早く!」


三人は急いで集中治療室に向かった。


「ま…こと…?」

   
ガラスの向こうでベットに横たわり、たくさんの管がつながっている。 

   
「どうして私…真が出て行くの気づかなかったんだろ?気づいてたら真は…真はこんなことにならなかったのにっ!!」

  
ガラスに手をあて涙ながらに叫び、崩れ落ちた。

   
「由理っ!大丈夫だから…。」

   
陽奈は由理をささえ、近くのベンチに座らせた。由理の涙は止まらない。

   
「ちょっと賢人から、よく話を聞いてくるね。はい、これで涙拭いて。真くんは大丈夫だよ。」


由理にハンカチを渡し、陽奈は賢人のもとへ行った。






「ねぇ、ほんとのところどうなの?賢人、真くんは助かるの?」

   
「……都さんは?」

   
「ベンチに座らせてきたけど…。」

   
「…。実はな…真はもう……」

   
「…助からないってこと?」

   
賢人は返事をせず、集中治療室にいる真をガラス越しに見た。

   
「それじゃ、由理は?由理はこれからどうするの?どうすればいいの?」

   
「俺だってどうしたらいいかわかんねぇよ!」

   
「由理、昨日やっとプロポーズ受けたのに!このまま真くんが死んじゃうなら、由理だって死んじゃうわよ!」

   
賢人は陽奈のほうを向いた。 

   
「このこと、都さんに言うなよ。今日のところは帰って明日俺のところに来るように言ってくれ。」

   
陽奈は黙ってうなずき、由理が座っているベンチへ歩いていった。

   
それを見送ると、賢人はゆっくり真の方を見て静かに言った。






「バカだな、お前も……。」










そのころ、陽奈は由理のもとへ向かっていた。由理はベンチで泣き疲れ、ぐったりとうなだれていた。

   
「由理…今日のところは帰ろう。明日また来ようね。賢人も何か話があるようだし。」

   
「真は?」

   
「…大丈夫よ。そんな心配はいらないわ。ね、信じて帰りましょ。」

   
陽奈は無理矢理な笑顔で由理を元気づけ、病院を後にした。

   
「ねぇ、由理?」

   
「ん?」

   
「今日、うちでご飯食べない?由理の大好きなシチュー作ってあげる。」

   
「ありがとう。でも悪いわ。」

   
「いいのよ。明日会社だし、一緒に行くのもいいでしょ?」

   
由理は陽奈がいなかったら会社に行けないところだったと、とても感謝した。

   
そして、一度由理のマンションに戻る。

   
「あら?急いでてカギかけるの忘れちゃってたみたい。」

   
「えっ!急いでたから私もうっかり……ごめん由理ぃ。」

   
玄関に入り、一応部屋を確認したが特に人が入った形跡がなかったので二人は安心した。そして由理は軽い荷物を用意した。

   
「じゃあ行こうか。」 

   
二人は玄関を出て鍵をかけた。そこへ黒いコートに身を包んだ男が二人、由理と陽奈の前に現れた。

   
「ちょっとお尋ねしますが、都由理さんですか?」

   
「何なんですかいきなり!」

   
陽奈は由理の前に立ち、そう言った。

   
「あぁ、私らはこんなもんですがね。」

   
そう言って男は黒い手帳を取り出した。警察だ。

   
「だから、いったい何のようなんですか?」

   
「昨日、駿河公園で関野真が何者かによって数箇所指され、現在意識不明だ。目撃者はいない。さらに凶器も見つからない。」

   
由理はビクッと、体をこわばらせた。誰かに見られている…。そんな気がした。

   
「…それで、昨日最後に目撃されたのは公園の近くのレストランだ。そのとき被害者は女の人と一緒に食事をしていたと…それはあなたですよね?都由理さん?」

   
「まさか由理を疑っているんですか?」

   
「誰もそんなことは言ってないですよ。ただそのレストランから出たあとの話をお聞きしたいんです。いいですか?」

   
「今はそんな話をしてられる余裕はないですよ!何考えているんですか。また今度にしてください。由理はかなりの精神的ショックを受けているんです。真くんの意識が回復してからにしてください!!さぁ由理行こうっ。」

   
陽奈は逃げるように由理の腕を引っぱり、その場を去った。

   
「木上陽奈……都由理の親友か…。」

   
警察はそうつぶやくとマンションを後にした。


to be continude...