オリジナルサスペンス

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第2話














11月1日、今日は由理の誕生日である。


真と約束をしていた由理はその日一日ず っとご機嫌だった。


ルリコに何を言われようともかまわず笑顔。


大事な書類を間違ってシュレッダーにかけてしまっても笑顔。とにかく変だ。






「由理?由理ってば。」


陽奈はそんな由理を見て少し心配そうに見た。


「な〜に?陽奈。どうしたの?」


笑顔で陽奈のほうを向く由理。


「今日の由理、すっごく変だよ。いくら今日いいことが待ってるといってもさ、その笑顔はないよ。ずっと笑いっぱなしじゃん……。」


「んーだってさ、んふふふふふ。」


「はぁ…、わかってるよ。今日は由理の誕生日で、しかもつき合い始めて四年目なんでしょ?おめでとおめでと。」


「陽奈ぁ、ありがとー!」


陽奈はやる気のない返答をしたが、由理は全く意識せず笑顔で陽奈に飛びついた。


「ぐえっ、今はまだ勤務中だよ!」






もう由理の暴走は誰にも止められない……。








退社時間になり、由理は先に待ち合わせの店へ向かった。


真は少し仕事が残ってしまったので先に行ってるように言われたのである。


由理は途中本屋へ寄り、本日発売の雑誌の後ろのほうにある星占いのページを開いてみた。





「運勢 何か不吉なことが起こりそうな予感。 

今大事なものは絶対に手放さないでしっかり握り締めていて。

事故や病気に注意!」





「!?」





由理はいきなり誰かが自分を見ている強い視線を感じがして振り向いた。


しかし、周りは立ち読みしている人で混み合っていてわからなかった。


由理は怖くなり、急いで本屋を後にした。






今日はさらに冷え込み、空も厚い雲で覆われている。


由理は寒さを耐えながら、待ち合わせをしている店へ向かった。






「ごめん、ごめん!仕事が思ったより長引いてしまったよ……。」


由理はコーヒーを三杯ぐらいおかわりをしたころ、真が頭をかきながら由理の前に現われた。


「もう、コーヒー三杯目よぉ。遅くなるならメールぐらいしてくれたらよかったのに。」


「いやいや、ほんとにごめんよ。」


真は謝りながら由理の反対側へ座った。


由理はコーヒーカップを手に取りながら、真に言った。


「今日は私たちが付き合って四年経つのよね。早いねぇ。」


「ああ、そうだね……。」


「ふふ、ねぇ、ところで大事な話って何?」


由理は笑顔で聞いた。すると、真も笑顔を返し、上着のポケットから紺色の小さな箱を取り出した。


「由理、これ…。」


真は照れながら由理に渡した。


「え?いきなり何?」


由理は不思議に思いながらも目の前に出された箱を手に取り、そっと開けてみた。





「!!」





由理は思わず真を見た。


中身はキラキラと輝くダイヤモンド。





「お誕生日おめでとう。それと今日は付き合って四年目の記念としてな……その……あの……。」


「あはは、真の顔すごく赤いよ。もう照れ屋なんだから。」


「なんだよ人がせっかく〜。」


「ううん、本当にありがとう。さっそくはめてみるよ!どう?」


由理はリングを左の薬指にはめ、真に見せた。


「すごく似合うよ。やっぱり俺が選んだだけはあるね。」


「それって私のこと?」


「!!」


真はゆでだこのように耳まで一気に真っ赤になった。


「ほんとに真って面白いね!」


由理は笑顔でそう言った。







二人は店を出て、近くにある駿河公園を散歩した。

   
この公園はとても緑が多くキレイなところで、夜になると外灯がふんわりとやさしく灯り、カップルには人気のスポットである。


二人はここでいつもデートでのんびり散歩をしているのである。


「付き合って四年経ったんだなぁ。」


歩きながら真はそうつぶやいた。


「ねぇ、真。」


腕を組んでいた由理はいきなり手を離し、足を止めた。


「どうした?」


真も立ち止まる。由理はうつむいて言った。


「……これからもずっと、ずっと真の傍にいていいよね?」


「もちろんだよ。俺には由理しかいないよ。」


真がそう言うと、由理は顔をあげて微笑んだ。それを見て思わず真は由理を抱きしめた。


「…なぁ、由理。」


「ん?」


「俺と結婚しないか?」


「!!」


由理はいきなりの告白に顔を上げた。いつになく真の真剣な表情。

   
「俺はもう由理に不安な思いはさせたくない。絶対に幸せにしてみせる。」

   
「真……。」

   
「俺の気持ち受け取ってくれるか?」

   
真の問いかけに、由理は答えた。

   
「私、真となら絶対に幸せになれるわ。ありがとう!!」

   
二人は強く抱きしめあった。






しかし木の陰でこっそり二人の様子を見ている影が……。






二人は外灯下のベンチに座った。川に反射して光る夜景がとてもきれいである。

   
「このまま時が止まればいいのに。」

   
由理は真の肩に寄りかかりそう言った。

   
すると、空から白い綿のような雪が舞い降りてきた。

   
「あ…雪……。」

   
「11月の初めのくせに早いな…。」

   
「今年は今までになく冷え込むって言ってたしね。」

   
「由理、寒くないか?」

   
「ん?真といるから平気よ。」






そして二人は口づけを交わした。





真っ白な雪が二人を包むように降り注いだ。





まるで二人を祝福しているように……。




To be continude...