オリジナルサスペンス

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第17話














事件から三ヵ月後、由理は病院に通いながら心と体の治療をしていた。


由理はあの時から血や、ナイフを見ると恐怖で発作が起きるようになっていたのだ。




そして今日も一人で病院へ向かっていた。




いつものように川岸を歩き、駿河公園を抜け、街の交差点を通り病院へ向かう。


由理は駿河公園を歩きながらいつもあの事件のことを思い出していた。


そしていつも涙を流し、一人だけ生きる自分に罪悪を感じながら両手を強く握り締め、公園を通り過ぎるのだった。


しかし今日はいつもと感じが違う。


なぜか公園に入っても罪悪感がない。


涙もでない。


自分の心が変化したのか、それとも何かあったのか?


それは由理自身にもわからなかった。


そして公園に入りベンチの横を通り過ぎようとした時……



「都…由理さん。」



ベンチから声が聞こえた。


由理はすぐにベンチの方へ振り向く。



「!!」



ベンチには誰もいない。




確かに誰かが私を呼んだ。



それに聞いたことがあるような声?……気のせい?



由理は急に不安な気持ちになり、急いで公園を出ようと走り出した。


そこの道へ出れば大丈夫!出口に向かい一気に飛び出した。



ドンっ!



人にぶつかってしまった。


「きゃあ!すみません!」



由理は急いで頭を下げ、ぶつかった相手にペコペコ謝った。



「由理さんこそ、大丈夫ですか?」


「えっ!?」


由理は急いで顔を上げた。


「名………」


目の前にはぶつかった相手がいるはずなのに、もう影も形もない。


不思議さと不気味さが交じり合って複雑な気持ちでいっぱいだった。



相手は私の名前を言っていた?



それにさっき一瞬自分が言いかけた言葉は……?







交差点に着いた。信号は赤、横断歩道で止まる。


街はいつものようにサラリーマンやOL、学生などがあふれかえり、信号待ちで由理はその人ごみにまぎれていた。


由理は早く信号が青になるのを願っていた。




信号が青になった。多くの人たちが一気に信号を行き交い始める。




由理は急いで渡ろうと足を速めた。


横断歩道の真ん中で一人の男とすれ違った。



「!!」



由理は思わず立ち止まり振り向く。


男も立ち止まり、振り向いた。


気がつけば周りの車の騒音や人の話し声など音が全くしなくなっていた。


由理はただじっと振り向いた男を見つめた。


その男とは距離があり、顔はよく確認できないが…どこか懐かしい感じがする。


そしてその男はニヤリと笑い、口を開いた。





「迎えに来ましたよ。由理さん……」





「名古くん!!」





一瞬のことだった。





男は人ごみに消され、姿はなくなっていた。



そして再びたくさんの騒音が由理の耳に響きだした。



しかし、由理は男がいたほうをずっと見たまま、その場から動かなかった。








今日は2月1日、あの日と同じ白い結晶が舞い降りる…


あのときの愛しさと悲しみをこめて…




END


あとがき
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