オリジナルサスペンス
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第16話
そのころ、賢人と由理は病院の屋上にいた。
「どうだい?キレイな満月だろう?君のように美しい……。」
賢人は由理を後ろから抱きしめながら、空を仰いだ。
由理は賢人がこれから自分をどうするのかとても恐怖で震えていた。
「どうしたんだい?とても震えているよ。由理。俺と二人だけだ。何も怖がることは無いんだよ?」
「………。」
賢人は今までになく優しい声で由理に話す。しかし由理は何も返事ができない。
「……由理…」
賢人は由理の耳元で囁いた。
「もう、君とは体をあわせた仲じゃないか……」
「!?」
「憶えていないのかい?」
賢人は由理の反応にニヤリとしながら言った。
そして由理から離れ、そばの手すりにもたれながら由理を見てニヤリと笑った。
「11月1日、そう、あの日……君をマンションへ連れて行ったのは俺さ。真のふりをしてな。」
「え…!?」
由理はその言葉にその時の記憶を一気に思い出した。
あの日、真と肩を寄せ合いベンチで雪を眺めていると、いきなり後ろからハンカチで口を押さえられ失神し、気がつくと自分のベットに寝ていて、目の前にいたのは……
「名古くん!?」
由理は頭を抱え、しゃがみこんだ。
あの時一緒にベッドで寝たのは真だと思い込んでいた……これは賢人が操作した記憶?
じゃあ、あのキッチンの血も、花本ルリコも、そして真も…?
「はははははは!思い出してくれたか?」
賢人はゆっくりと近づいていき、由理の前でしゃがみ、頭を抱えて震える由理の頬をさわった。
「君はとても美しかった。体の隅から隅まで……俺の想像を超えていたよ…。」
バシッ 賢人の手をはたきキッと賢人と睨みつけた。
「触らないで!」
賢人はそんな由理を見てニヤリとして言った。
「これ以上抵抗するのは無意味だよ。もう君は俺から逃れられない…。」
ガツッ
そして由理を押し倒し無理矢理、由理を抱こうとした。
「いやあっ!やめて!!」
「動くなっ!!警察だ!」
「!?」
賢人と由理は声のした方に目線を向けた。日斗警部だ。
「名古賢人、お前を殺人のおよび殺人未遂で逮捕する!!」
日斗警部は拳銃を賢人に向けて構え、少しずつ近づいていった。
「まさか、こんな単独で調べまわっている刑事さんがいたとはね。俺的には予想外だったぜ。」
賢人は由理から手を離し、起き上がった。
「警察をなめんなよ!さぁ、こっちへ来るんだ!」
賢人は自分の髪をかきあげ、警部を睨んだ。
「俺は由理をものにするためだけにここまで来た。もう、望みは叶ったんだ。もう何も思い残すことは無いさ。」
そういうといきなり由理の腕をつかみ、由理を抱きおこした。
「おいっ!?」
警部は慌てて叫んだ。
「由理は俺のものだ。誰にも渡すものか…」
「いや、放してぇ!!」
賢人は嫌がる由理に無理矢理抱きしめてキスをした。
「いやあ!!」
由理は泣きながら抵抗する。すると賢人は由理の耳元でささやいた。
「また、迎えに来るよ。由理…永遠に愛してる……」
由理は、その言葉を聞いて、時間が遅くなったように周りがゆっくりと見えた。
その中で賢人は由理の肩をもって優しく微笑んだ。
今まで見たことのない微笑み…
少し寂しそうな…
そして賢人の目から一筋の涙が……
「きゃあ!」
ドサッ!
その瞬間、賢人に突き飛ばされ、床に倒れた。
そこで由理は我に返り、急いで賢人のほうを見る。
賢人は屋上の端の手すりをつかんでいる。
「おいっ、まさか!!やめろっ!」
警部は賢人に向かって走り出す。
「もう…遅いですよ。警部さん。」
そう言うと、賢人はガッと手すりに足をかけ、手すりの上に立ち上がった。
そして由理と警部の方を向いた。
警部は思わず立ち止まる。
大きな満月の真下、賢人は両手を広げ、不敵な笑みを浮かべながら、そのままゆっくりと下へ落ちていった……。
「また、迎えに来るよ……」
由理の脳裏に賢人の言葉が焼きついて離れない……由理はただ賢人が落ちた方向を見ていた。
ダダダッ 「くそっ!!」
警部は下を見て、真下が血の海になっているのを確認し、手すりを思い切り叩いて悔やんだ。
木上陽奈は大量出血により死亡。
そして名古賢人は屋上からの飛び降り自殺により死亡。
由理はただ一人となった。
to be continude...