オリジナルサスペンス
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第14話
どれだけ時が経ったのだろう。
二人はしばらく動かなかった。
目もそらさずじっとお互いの出方を探っているようである。
ついに片方が口を開いた。
「……ここになぜ入ったんだ?」
賢人だった。
普通勝手に入ったのなら突き飛ばされてもおかしくないのに賢人は全くそんな素振りを見せない。
陽奈はその賢人の言葉をきっかけに落ち着きを取り戻し、陽奈は言った。
「ねぇ、賢人?私のことどう思ってる?」
唐突な質問。しかし賢人はまったく動じず言った。
「質問に答えてくれ。」
「この間……この診察室で私を好きだと言ってくれたよね…。」
陽奈は胸を押さえ、そう言って賢人の目を見た。
賢人の目は何も語らない。ただ陽奈をみている。
しかし次の瞬間…
「あははははは!」
賢人はいきなり笑い出した。
「何がおかしいの?ただ聞いただけでしょう?」
「はは……ごめん、ごめん。」
賢人はお腹を押さえ、笑いながら陽奈を見て言った。
「あれは出来心だよ。」
「え?」
「お前を見ているうちにな、ただやりたくなっただけだよ……ハハハ…まさか本気にしていたとはなぁ。笑っちゃうよ。ハハ……。」
「………。」
陽奈は頭の中でプツンと切れる音を聞いた。
そして陽奈はキッと賢人を睨みつけ、指差して叫んだ。
「あなたが真くんと花本ルリコを殺したわね!」
「……お前、マジでそんなこと言ってるのか?」
賢人の顔つきが変わった。
「そう……真くんが殺されたことも、ルリコが賢人の目の前で死んだことも、わかったわ!全て賢人が仕組んだことだったとね。」
「何を根拠にそんなことを……?馬鹿げているね。俺と真は昔からの親友だぜ?俺が真を殺せるはずが無いだろう?」
賢人はそういいながら、近くの診察台に座った。
「だから、あなたは花本ルリコに真くんを殺させたんだ。」
「なぜそんなことをしなければならない?そこまでして真を殺さなきゃならないんだ?」
「あなたはどうしても真くんから奪いたいものがあった……。」
陽奈は下を向き自分の震える手を見た。
何を恐れているのか……
これから自分が言ってしまう事が自分自身を変えてしまうのではないか…
賢人の反応が怖いのか……。
陽奈は静かに目を閉じ、言った。
「……由理のことが…好きだから……賢人は由理のことが……。」
陽奈の目から雫が落ちる。
「……。」
賢人はただ陽奈を見ている。たださっきとは違う目をしている。
陽奈は顔をあげ賢人を見て言った。
「あなたは由理を手に入れるために真くんを殺したのよ!自分の手を汚さずにね!!」
そしてそばにある賢人の机からカルテを取り出し、賢人の方に投げた。
カルテに書いてある名前は「都 由理」
「これを見て確信したわ。もうずっと前…そう5年前のカルテよね?もう使われないものなのにあなたの机に入ってたわ。しかもこの一枚だけ。」
賢人はゆっくりと立ち上がり、足元に落ちている由理のカルテを拾い上げた。
「もう…これ以上君に何を言っても無駄だね……。」
「賢人…本当に……?」
陽奈は賢人が殺したと確信していながら心のどこかではそうでないと信じたいところがあった。
to be continude...