オリジナルサスペンス

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第13話













「……警部さん。」


「え?どうした?」


「私、全てわかりました。」


「そうなんですか……ってええっ!?」





暗い闇の中、キッチンで青白く光る血をバックに二人は話をしていた。


あまりの衝撃的な言葉に日斗警部は驚きその場に転んだ。


「大げさすぎる動きですよそれ。」


呆れる陽奈。そして玄関に向かった。


「で、どこ行くの?」


日斗警部は慌てて起き上がり、陽奈に聞いた。


「そりゃ決まっているでしょ。」


「……まさか真犯人のところか?」


陽奈は振り返り、警部に微笑んで言った。


「もしかしたらもう、警部さんとお別れかも……。ちょっとの間でしたけど付き合ってくれてありがとうございました。」


ゆっくりと頭を下げた。警部もつられて頭を下げる。


「では……。」


陽奈はそう言って出て行ってしまった。


「ちょっちょっと待ってくれ!真犯人は誰なんだぁ!?」


警部はそう叫んで陽奈の後を追いかけた。


「うわわ…この靴〜!!」


しかし、靴が上手くはけずに転んでしまい、日斗警部は陽奈を追いかけることができなかった。







陽奈は一人、病院へ向かっていた。


もう夜であったが、何とか許可をもらい病院内を歩いていった。


陽奈は由理の病室を見つけたとき、そのドアの前に立ち、目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をした。


そしてドアを静かに開けた。


中を覗くと、小さなライトが布団の盛り上がったベッドにあたっており、ベッドから寝息が聞こえてくる。


由理は寝ているようだった。


「よかった……。」


陽奈は安心して、ゆっくりと音がでないようにそろそろとドアを閉めた。






ドアが閉まった後、ベッドからの寝息が止まった……。






次に陽奈が目指したのは、病院の奥にある精神科の診察室……。


「鍵が開いていなかったら、どうしようかな?」


陽奈は何も考えていなかったようだ。


賢人しかそこの鍵を開けられないことを忘れていたらしい。しかし陽奈はそこへ向かった。


暗闇の通路の中、精神科と浮かぶ看板が見えた。ごくりと唾を飲み込む。


「よし……。」


陽奈は決心したように診察室のドアに手をかけ引いた。



カチャリ。



「え……?」


ドアが開いている。まさか賢人がいるのか?


何かモノ知れない恐怖が陽奈を襲う。


勝手に入ってきたと賢人にばれたら、注意されるだけでは済まされない。しかし今は……。


震える手に何とか気持ちを込め、ドアを開け中に入った。


中は暗闇だった。賢人はいないらしい。


「なんだ、ただの賢人の鍵のかけ忘れか……。」


陽奈は安心し、こっそりとペンライトを取り出し、スイッチを入れた。


いつも賢人が患者の診察をしている机……そこにもしかしたら何かある……そう陽奈は確信していた。


音をたてぬよう、光がどこにも漏れぬよう静かに慎重に机に近づいた。


机の上はきれいに片付いている。陽奈は下の引き出しを静かに開けた。


「あ、あれ……?」


机の中にあったのは一枚のカルテだった。


陽奈は、手にとってそのカルテに書かれているのを見てみた。


『精神状態はかなり危険。方法として精神安定剤投与、睡眠薬配布……催眠療法……』


陽奈は『催眠療法』という言葉に驚きを覚えた。


賢人が催眠術を……?それが本当なら今までのことは!?


そして急いでそのカルテの患者の名前を見た。


「!?」


陽奈はカルテを元の場所に戻して、立ち去ろうとした。





カチッ。





いきなり部屋のライトがついた。



陽奈は顔が一気に血の気が引いた。



恐る恐る振り返ると……ドアのところに賢人が腕を組み立っている。



「……。」



陽奈は言葉が出なかった。


もう頭の中が真っ白でただ賢人を見ていることしか出来なかった。



賢人は無表情だった。何も感情のないただのロボットのよう……。じっと陽奈を見る。







「はっ!?まさか。」


その頃日斗警部はまだ由理のマンションにいた。


陽奈の行動や考えが解らずに、ずっとキッチンに広がる血の跡を眺め考えていた。


しかし今までの自らの調査と陽奈の行動を考えると……


「……病院か?」


警部はそうつぶやくと急いでマンションから出て、病院に向かって走り出した。



to be continude...