オリジナルサスペンス
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第11話
北風が吹く夜の道。二人は黙々と現場まで歩いていた。
「まずは…真くんが刺された現場の状況を教えてください。」
寒さに冷たくなった手をこすりながら、隣で考え込む日斗警部に尋ねた。
「ええ?あぁ…犯行時刻は、発見されたのが5時半ごろでまだ血は固まっておらず意識も少しあったらしいから、5時あたりだろうな。」
「でも、なぜそんな時間に真くんがここへ……?」
「それがまだわからんのだよ。ケータイで呼び出された形跡もないし、手紙などありえないし……。」
「ああ……そのあたりは由理に聞いてみないと、わからないんですね?」
「うむ…しかし彼女は今聞きだせるような状態ではないからな……。」
「いえ…私が聞いておきます。何か話してくれるかもしれないので。」
「すまないね……。あ、このベンチだ。」
二人の目の前に事件の起きたベンチ。
あのときの血がまだ辺りに飛び散ってあり、ベンチにも落ちずに残っている。
どれだけ真が思いきり刺されたのかが想像できる。
この現場を見て陽奈はゾッとした。
「ここで、被害者は発見されたとき胸を左手で押さえ、右手でベンチの背にかけていたらしい。こんな感じで。」
日斗警部は状況を自分で陽奈にやってみせた。
ベンチの左側にすわり、左手で胸を押さえ、右腕を背もたれにかけ、顔は上向き……。
「警部。真くんは左側に座っていたんですか?」
「ああ、そうだったらしい。こんな感じで。」
警部はベンチから動かず、体制を保ったまましゃべった。
「まさか、真くん。ここにずっといたんじゃ?」
「え?なんだって〜!?」
警部が空に向かって叫んだ。
「私、由理に会ってきます。」
陽奈はそう言って、ベンチにまだ体制を保ったままの警部を背にその場を立ち去ろうとした。
「……行っても無駄だぞ。」
陽奈の近くで声がしてベンチの方に振り向くが、警部はベンチで体制を保ったまま…それにその声は警部の声ではない。
「誰!?」
陽奈は辺りを見回した。
すると、近くの街灯の影から男が現れた。
「け、賢人!?」
黒いロングコートに身を包み、闇にまぎれて現れたその姿はまさしく賢人だった。
「…もう、病院の面会時間は過ぎてるし、今何時だと思ってるんだ?」
陽奈はふと自分の時計を見た。もう夜の十時を回っている。
「賢人、なぜここに?」
「たまたまだよ。この辺りを通りかかったら空から叫んだ声が聞こえてね……。何かあったのか?」
「え…いや、まあ……。」
陽奈はあやふやな返事をして、ベンチの方を見た。
賢人も陽奈の目線を追ってベンチを見た。
「ぐおぉ〜…」
ベンチには警部が体制を保ったままいびきをかいて寝ていた。
「なんだか、あの警部さん頼りないのよね。」
「あの調子じゃなぁ……。」
二人は近くにある行きつけのバーで話していた。
結局、日斗警部をあのベンチにほったらかしにしてしまったようである。
「陽奈…何かわかったことあるか?」
「え?何が?」
「お前、事件のこと調べるためにそこにあの警部さんと来たんだろ?」
「ん……ううん。でも、犯人はわかってるじゃない?」
「誰!?」
陽奈の言葉に少し驚き、賢人はすぐに聞き返した。
「え?花本ルリコでしょ?」
賢人の反応に驚きながら答えた。
賢人はその言葉を聞いて軽く陽奈にうなずき、グラスを手に取った。
「まぁ、そうだよな……。」
そして一気にグラスの中身を飲み干した。
to be continude...