「今日は私がご主人様に日々の感謝を込めて、たくさんご奉仕しちゃいますvv」
両手で包み込むようにマイクを持ち、ブリブリな声でご主人様に挨拶をすると、萌は歌い始めた。
完璧な振り付けで踊る萌はアイドル並みの歌唱力でご主人様を釘付けにしている。
私も初めて萌の歌声を聴くが、なかなかいいんじゃないか?
いっそCDデビューしてみるとか・・・儲かるんじゃないだろうか。
そんなことを考えながら萌のステージをじっと見ていた。
「メイド喫茶へようこそ!」(仮)
第5話
本日はこのメイド喫茶で初めてのメイドによるスペシャル企画が行われている。
夜だけの特別ご奉仕として常連客を中心に予約制で、メイドのトークショーやライブステージなどを行うものである。
今まで萌一人だけだったので、それがなかなかできなかったのだが、今回急に2人増えたこともあり、紹介がてらライブをやろうということになった。
まあ、いつも夜は忙しい私も仕事は楽だ。料理を作らなくていいのだから。
一番後ろの席に座り、ラジカセをいじりながら今日はのんびりみんなのメイド活動を観察させてもらうとしよう。
で、今しょっぱなからテンション高めで登場したのが、ウチの看板メイドの萌である。
ほとんどのご主人様は萌目当てだ。
いつもよりヒラヒラしているメイド服で激しく踊りながら歌う萌に、みんなメロメロのようだ。
ははは、It'sマジック。
「ご主人様〜。萌のダンス&ソングはどうでしたか?楽しめましたか?」
「萌ちゃ〜んvv」
「最高〜!」
萌の問いにご主人様は必死に応える。萌はにっこりと笑みをつくると、片手を挙げた。
それは次の曲を流せという合図だ。私は手に持っていたリモコンで近くのコンポーネントステレオ・・・略してコンポに指示を送った。
そしてコンポを通して、店内につけられたスピーカーから音楽が流れ始める。
私はプログラムをチラリと見ながら確認をとり、うなずいた。よし、曲は合ってる。
次の曲は軽い音楽・・・萌はこの曲で店内を違う雰囲気に変えてしまった。
不思議なくらい身軽に聞いていられる。なんだろ。選曲がいいのかな?
そして萌は歌い終わると、軽く咳払いをしてマイクを握りなおした。
「は〜い、ではでは〜今日はご主人様に新人のメイドを紹介しま〜す。焔ちゃん、お嬢〜コッチ来て☆」
一通り、萌のパフォーマンスが終わったあと、萌は焔とお嬢を呼んだ。
今まで隠れていた焔とお嬢がそろそろとステージにマイクを持って登場した。
ご主人様たちは「おおっ」と声を上げ、ピューと鳴らしたり、「焔ちゃ〜ん」とか声をあげるものもいる。
ま、焔はランチだけ担当していて知っている人は知っているもんな。メガネ属性な人にはもってこいの感じだ・・・・・・・おっと!?
ステージに現れた焔とお嬢を見て驚いた。いつもの2人と全く違う!
衣装はステージ仕様になっているので違うのは当たり前なのだが、それだけではない。2人の雰囲気自体が違う。
ご主人たちもそれに気づいたようで、みな静まり返った。
「では、萌が2人を紹介します。こっちから、焔ちゃん。メガネは伊達ではなくホンモノですvvそしてお嬢。天然炸裂です!」
おいおい、どんな説明だよ・・・。もっとましな説明のしかたあるだろ?
「さて、焔ちゃん。ご主人様に挨拶して!」
「は、はい」
少し緊張した面持ちで焔はうなずくと一歩前に出た。
青色というか、水色に近い色(サックスというのか?)のジャンパースカートで、胸元でゆれる大きなレースリボンがなんとも可愛い。
ふわふわのひざ上のスカートで白のハイソックス、靴はペタンとした動きやすそうなワンストラップのシューズを履いている。
頭は二つ縛りで上の方からリボンを絡ませてしばっていて、カチューシャではなくロリータ仕様のヘッドドレスである。
・・・・そうか、髪の毛を縛っているから雰囲気が違うんだ。
「は、初めまして・・・ご主人様。私のことは焔とお呼びください。よ、よろしくお願いします☆」
両手でマイクを持ち、アニメに出てくるような可愛い声を発する焔。深々と頭を下げた。
キタ――――――コレキタ――――――!!
私は思わず口を押さえた。あまりの可愛さに声を発しそうになったからだ。いくら一番後ろで見ているとしても、声は届いてしまうだろう。
なんと言っても焔はメガネ属性、アニメ声。さらに何あの可愛い髪形!頭下げたときに気づいたけど、分け目バッチリじゃん!!
はっ、いつの間に私は分け目フェチに・・・。いや、あれは犯罪だ。可愛すぎて息も絶え絶えになる・・・。
ご主人様も私と同感のようで、みな焔が頭を上げるや否や一気に野太い声が出始めた。
「焔ちゃーん」 「萌ぇぇ〜☆」 「可愛い!」 「グッジョブ!」
焔は顔を赤らめながら、頭を下げたときにずれたメガネの位置を直した。またそこが萌えですよねぇvv
で、焔が一歩下がり、もとの位置に戻った次に、萌は一言も言わずお嬢をビシッと指差した。
お嬢は「ええっ!?」と声を発し、慌てて一歩前に出た。
「わ、私はお嬢です。ご主人様にお会いできてとても感激です!これからもたくさんご主人様のために頑張りますのでよ、よろしくお願いします!!」
元気よく挨拶するお嬢。ほう、なかなかいい感じのキャラだな。
あのきょどり具合がなければいいんだけどねぇ・・・。
お嬢は焔と同じロリータファッションで、色違いのピンクのジャンパースカートであるが、こちらはニーハイソックスで絶対領域もバッチリ☆
紐がたくさんクロスされ、リボンが足首あたりについていてテカテカしたおしゃれなくつをはいていて、頭には大きなリボンのカチューシャをつけている。
こっちもなかなか似合ってるんじゃないかな〜。
お嬢はぎこちなく頭をさげ、きょどりながら元の位置へ戻った。
もちろんご主人様はお嬢の絶対領域と初々しさに萌えたようで興奮しているのは間違いない。
しきりにお嬢の名前を呼ぶ奴も登場し、お嬢は恥ずかしそうに俯いていた。
ま〜2人は結構高評価のようでよかったなぁ。お嬢もそれなりにいいスタイルなんだな〜。
くびれているとこはくびれてるし、出てるとこは出てるし・・・・・・。
しみじみ見ていた私をよそに、萌はニコリと微笑んでマイクを口元へ持っていった。
「では、お2人の紹介もできたので、ここからお2人にバトンタッチしてご主人様にご奉仕したいと思います。楽しんでくださいね。じゃ、2人ともしっかりね!」
「はい、萌さん!」 「了解です!」
萌は2人に無理やりなウインクを送り、ステージから降りていった。今着ているメイド服を着替えるためだ。
まったく・・・萌はいつの間にこんなに衣装を用意したんだ?というか資金はどこから出ているんだ・・・?
おおっと、それより2人の曲を流さねば。
2人の軽やかなステージは始まった。
最初に焔とお嬢が息の合う手の振りとハモった歌で場を沸かすと、一人一人に合った曲を歌い始めた。
焔は声に合わせてアニメの曲。たぶん、これは萌の選曲だろう。以前、このアニメの原作を私に押し付けてきたことがあったな・・・。
でもこの曲と焔の声は結構合っているようで、周りの様子もまんざらでもなさそうだ。
正面からまじまじと焔を見たのは初めてだということに今気づいた。いつも厨房から隠れるようにしか見ていなかったからな・・・今日はしっかり焔の姿を焼き付けておかないと!ああ、可愛い・・・。少し音を外そうが、焔の可愛さは全く変わらないぜ。『萌え』とはまさにこういうことだなぁ。
お嬢は自分の趣味に走っているのがわかる。この曲は〜V6じゃないかぁ!!しかも新曲。
ばりばりサビの辺り、踊っちゃってるし。
なんだかんだお嬢もメイドにそまりつつあるな・・・まあ曲を変えればもっと気に入ってもらえるだろうな。
「店長。なかなか楽しんでるようじゃない?」
「えっ!」
いきなり声をかけられドキリとして横を振り向くと、萌がニヤリとしながら立っていた。
着替えが済んだようで、先ほどとは全く変わっている。ケープを羽織っていて服は完全に見えない。
ただ、黒服で、萌のメイクもバッチリと黒のアイラインが入っていて、どうやらゴスロリちっくな感じのようだ。
「なるほど〜。なんか似合うなそれ」
「まだ中身を見てからのお楽しみよ!店長まで驚かしてみせるんだから」
ピースサインをして得意げに言う萌。今まで見てきたどの萌より、とても輝いているように感じた。
いや、なんかホント。すごいオーラを放ってるんだよ。かなりやる気でまくっていて・・・。
「うんうん、楽しみにしてる」
そう言って笑うと、萌は少し驚いた表情をした。
「ん?どした?」
「うんん。なんでもない」
私の問いに萌は首を振って否定し、軽く俯いた。なんだろ?
「そういえば、よくこんな短期間でステージに立てたなあの2人」
「ああ、焔ちゃんは頭いいから覚えが早いし、お嬢は好き勝手に歌ってるから大丈夫だったの」
「ほう、お嬢はなんとなくわかるが、焔はどうなんだ?」
「ええ、今は大学4年で来年は院に行くんだって」
「!?」
マテ。焔はいま歳いくつだったか・・・・・・?
私は慌てて指を使って計算をしようとした。だが、その様子を見ていたのか見ていないのか、萌は淡々と言った。
「あ、驚いた?私も焔から聞いたときはびっくりしたよ。だって19歳なのに4年生ってありえないと思ったモン」
「そりゃそうだろ・・・」
驚きを隠せず、私は中途半端に右手の指を折り曲げたまま、萌に言った。
信じられねぇ。なんだその話!!ホントかよっ?!なんでまたそんな娘が・・・
「あ、もう私も出なきゃ。じゃ、ちゃんと見ててよ〜!!」
詳しく話を聞こうと思っていたところで、お嬢の歌が終わり、萌は足早にステージへ向かっていってしまった。
「・・・うわ。なんかすっげぇ頭ん中がもやもやしてきた」
そんなことをブツブツ言っていると、萌の声が聞こえてきた。
「さて、ここで私を含め3人でいろいろ話してみたいと思います。もっとご主人様と親しくなるためにも私たちのことをもっと知ってほしいですし。ね?」
イスに座って、3人はいろいろ話し始めた。
お題は事前に用意してあって、萌は進行表を見ながら話を進めている。完璧だ。
「えっと、お嬢の口癖が・・・『どんだけだよ』って書いてあるけど・・・ナニコレ?」
「え?待って〜そんなこと言ってないよ!?」
「でもお嬢ってさ、よく言われない?天然て」
「そんなことないよ。私は真面目だよ〜」
3人のたわいもない話だが、ご主人様は満足そうに聞いていた。中にはメモっている人もいる。このネタ何に使うんだよ・・・。
と、話が一通り終わった後、軽く休憩が入った。
萌はステージから降りて、ご主人と話を始めた。囲まれてしまい、こちらからは萌の表情を伺うことはできない。
だが、たぶん萌のことだ・・・ご主人にとびっきりの笑顔で交わしているだろう。
リモコンを持ったまま、私は軽く伸びをした。
はぁ・・・水でも一杯飲もうか・・・とキッチンの方へ向かおうとしたときだった。
「あ、あの・・・」
「え・・・?」
声をかけられた方を向くと、お嬢が恥ずかしそうに立っていた。私は手に持っていたものに気づいて慌てた。
わ、やべ・・・リモコン持ったままだった!!店長だってバレちまったか?
「あ、あの・・・先日、近くでぶつかった方ですよね?」
「あ、ああ・・・あの時はどうも・・・」
そう言って、私はささっとリモコンを背中に回した。
お嬢はどうやら気づいていないみたいだ。
「きょ、今日はなぜここに?」
「いや、興味があってね。初めてメイドによるステージを行うって聞いたからどんなもんか見に来たんだ」
確実に私はウソを言っているのだが、お嬢は知るはずもない。私の言葉を信じ、お嬢は赤くなって俯いた。
「まさか、君がそのままメイドになっちゃうなんてな・・・」
それはホント。
「私も別にメイドとして働く気はなかったんですよ?でも、気づいたらこの格好をさせられて、も、萌に・・・・・・あ〜もう〜〜〜〜」
そう言って足踏みをするお嬢に私は思わず笑ってしまった。
「いやいや、とても似合ってますよ。でも一つアドバイスするとしたら歌の選曲かな」
「え・・・あ・・・まあ、そうですよね。でも〜私ここに来たのってつい最近じゃないですか〜。だから萌ぇ〜な曲とか覚えるのが大変で〜いや、まあダンスも覚えなきゃいけなかったし。なんてったって3人で歌う曲とかも覚えなきゃいけなかったじゃないですか〜。だからちょっとね〜」
「短期間と言えど、なかなかだったよ。その調子で頑張って!」
「あ、ありがとうございます。な、なんかとても複雑な・・・」
「ま、まあ・・・私が言うのもなんか変ですよね。」
そう言って私は頭をかこうと手を頭へ持っていった・・・がなんかコツっと硬いものが。
「あ・・・」
リモコン持ったままだった。
お嬢はそれに気づき、首をかしげた。
「なんですかソレ・・・なんかどこかで見たことあるようなリモコン・・・」
いつも曲を練習するとき使っていたものなのだから見覚えあるはずだよ・・・。やべぇ・・・
「リモコン・・・何に使ってるんすか?」
「・・・あ。ああ・・・いや、コレは私のじゃないよ」
なんか勝手に口がしゃべってる?
「た、たまたま・・・そ、そうたまたま店長が・・・なあ・・・私に預かってくれと渡してきたんだよ」
「店長が?は、はぁ・・・ああ、それここのコンポのリモコンじゃないですか!?」
「あ、ああ・・・」
「な、なんで持ってるんですか?!」
「いや、だから店長に渡されたって」
「店長が!?」
「あ、や・・・実は店長とは知り合いなんだよ」
「そ、そうなんですか!?」
驚くお嬢。思わず口を押さえ、私を見ている。・・・そんなに衝撃的?
「あ、あの突然聞いてアレなんでど、店長ってどんな感じなんですか?」
「・・・え」
どんな感じ言われてもな・・・こんな感じだよこんな感じ。店長はこの私じゃ!
そんなことを思っている私に全く気づくことはなく、お嬢は頭に手を置きながら話を続けた。
「いや、私一度も会った事ないので・・・変ですよねぇ。バイト初めてまだ会ってないって」
「ま、まあ普通最初の時ぐらいは挨拶するよな〜」
な、何を言ってるんで私は・・・自分が逃げたのがいけないのに・・・。
「それがなかったんですよ。全て萌に阻まれてしまって」
「も、萌・・・ちゃんね。す、すごいよね彼女」
「そう!萌っ!!もとからアイツが元凶なのよ!アイツがここにいなかったら私は今頃・・・」
「そう言えば、萌ちゃんとはずいぶん仲がいいみたいだけど?」
「萌とは大学からの友人なので〜」
「ほ〜そうなんだ」
「昔から変わってませんよ。萌は・・・」
そう言って微笑むお嬢は、なんだかいつもと違っていた。
「私も変わらないけど・・・」
「お嬢・・・?」
軽く俯くお嬢に手を差し伸べようとしたときだった。
「コラ!?」
「「!!」」
いきなり怒鳴り声が聞こえて慌てて手を引っ込めた。そして声のした方を見ると、萌がすごい勢いでこちらをにらんでる。
よく見ると、萌の周りにいるご主人様(たち)もじとっとした目で私を見つめる。
わ、私が何か悪いことしたか?
「あ、あの・・・」
私が声を発したと同時に、萌が言った。
「さっきからお嬢とベタベタしすぎよ。誰だか知らないけど、メイドの独り占めは許しません!!」
「っ!?」
まさか私がお嬢としゃべっている様子をじっと見ていたわけじゃないよな・・・?というか、私もご主人様の一人でいいんじゃないのか?
「も、萌ちゃ・・・」 「さ、お嬢、ご主人様がお待ちかねですよ」
私が声をかけようと口を開いたと同時に萌の声に消された。
「は、はひっ!」
お嬢は声を裏返しながら慌てて萌の方へ走りよった。
ギロっと私をにらむ萌の目。怖い怖い・・・。まるで貞子のよう・・・とは言いすぎだが、「何勝手にお嬢と話してんだよ!」という訴えがすごくわかるような鋭い目だ。
ま、実際は「殺スゾ・・・」とでも思ってんだろうけどね〜。
そして、その萌の脇では必死にご主人様の相手をする焔の姿があった。
あ〜私も一言でいいから焔と話ができたらな・・・。
「ご主人様。お待たせいたしました。こちらアフタヌーンティセットでございます」
焔が私のもとへ暖かな紅茶とクッキーを持ってきてくれる。
「今日のクッキーは焔特製の苺チョコチップクッキーです。ご主人様のお口に合うか不安ですけど・・・・」
私を見る焔はとても不安そうで、今にも泣きそうである。どうせなら泣かしてしまいそうなところだが、それではせっかくのメガネも濡れるので、私は笑顔を返してクッキーを口へ運ぶ。
「美味しいよ。焔はお菓子作りが上手なんだね」
私の言葉に焔は顔を赤らめ、少し俯き、ずれそうになるメガネを必死におさえて言う。
「そ、そんなことないですよぅ〜」
「ホントの事だよ。前にも食べた焔のミントチョコムースも美味しかったし」
「ご主人様。早く飲まないと紅茶が冷めちゃいます!!」
焔は必死に私の褒め言葉を聞かないようにしようと話をそらそうとする。
全く焔は恥ずかしがりやなんだから。
そう思いながら私は俯いて顔が赤い焔を見ながら、紅茶を口に含んだ。
「ご主人様のお仕事は何をされているのですか?」
「ん?そうだな〜私の仕事は飲食店のオーナーだよ」
「オーナーですか。この響きってなんだかカッコいいですよね♪」
「そ、そうか?なんだか照れるな」
「ご主人様って容姿からとてもカッコいいですし、モテるのではないですか?」
「そんなことないよ。いつも社員には足のように使われてるし・・・」
「またまた〜そんなご謙遜を〜」
そう言う焔はなんだか楽しそうだった。私はここで本気を出す!!
「焔・・・」
「は、はい?」
私の落ち着いた声に焔は少し驚き、私をじっと見る。
「私がココにいる理由はなんだかわかるかい?」
「え・・・な、何ですか?」
心なしか慌てた様子の焔。私を見たまま首を軽く傾けた。
私は軽く瞬きをし、まっすぐ焔を見つめはっきりと声に出した。
「焔、君とずっとしゃべっていたいからだよ」
「ご主人様・・・」
そして手を取り合い、2人は見つめ合い―――
カーン!!
「はいっ!休憩終了です!!これから後半戦もじゃんじゃん盛り上がっていっきます!!」
いきなり店内にゴングが鳴り響き、私の脳内妄想はパッと消え去ってしまった。
軽く気が動転したままステージを見ると、かなり気合の入った萌がマイクを握り締め、叫んでいた。
「ここでいきなりの朗報です!!私、萌は焔とお嬢とユニットを結成し、CDを出したいと思います!というか出す予定です!!発売されたらご主人様もぜひ、聴いてくださいね☆」
「はっ!?」
脳内妄想が一気に破られ、現実に引き戻されたと思っていたが、まさかここでまたヘンな妄想が・・・ってイテテ。いくら頬をつねっても痛いだけだ。
まさか萌、本気なのか!CDデビューでもしてオリコン狙うとか言いだすんじゃないだろうな?
「目指すは紅白!そして世界進出!!私の夢は壮大なのであります!!」
なぬっ!?そう来たか・・・。そして会場は驚くどころか全て声援を送り、期待をしている様子だ。
半分驚き、呆れる私をほったらかしにして萌は淡々と話を進めた。
「新しい情報は常にご主人様にお伝えいたします。いつでも聞いてくださいねvv」
「・・・・・・」
そして再び萌のソロコンサートから再開される。
萌の合図に私は俯いたまま、リモコンのスイッチを押した。
私の脳内妄想をどうしてくれる・・・。
つづく。
な選曲で申し訳ないです。